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アート
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山田純嗣

雪舟《秋冬山水図》(国宝)の冬景をモチーフにした作品。
秋景と冬景で風景の印象は違うが、私は制作過程でこの2点は視点を変えて同じ場所を描いたものではないかという思いに至った。秋景は遠くから全体を眺めた風景、冬景は、秋景の左1/3をカットし、中央下部に小さく描かれた道を行く旅人の位置から見て三遠で描かれた風景ではないだろうか。この2点で大きく印象が違うのは、冬景の右上方に描かれた食い込んだ岩壁ですが、これは秋景の右上方に小さく描かれた細長い岩山でだとすると、視点を変えた時の位置関係が近くなる。秋景にも冬景と同様に道が描かれているが、そこに立って周りを見渡したと想定すると、秋景の道の左右にある岩は、冬景のように大きく見え、視界を遮ります。そして右の岩山越しに小さめに見える木は、秋景の右の山頂にある木だろう。道を進んでいく過程で、秋景では遠くに見えていた岩山が近くに迫って見えてきているという冬の厳しさも筆の勢いに加えた情景ではないだろうか。楼閣の屋根の向きがねじれているが、そこは、冬景の岩壁同様、雪舟特有の心情を優先して勢い余ってしまったところと判断する。実際立体を作った際に、秋景の道の位置に携帯カメラを置いてみて撮影すると、もちろんそのまま冬景のようにはならないが、冬景の道の左右に迫る岩山の感じや、背景の岩山や岩壁の位置はおおむねあっていた。

展覧会歴

  • 2018年 「めがねと旅する美術展」青森県立美術館、島根県立石見美術館、静岡県立美術館
  • 2015年 「山田純嗣展 絵画をめぐって」Bunkamura Gallery(東京)
  • 2015年 「next 信州新世代のアーティスト展2014」伊那文化会館 美術展示ホール(伊那市)
  • 2014年 「overflow 浦辺佳奈枝・前橋瞳・山田純嗣」画廊翠巒(前橋)
  • 2014年 「山田純嗣展 絵画をめぐって 反復・反転・反映」不忍画廊(東京)
  • 2014年 「山田純嗣展 絵画をめぐって 理想郷と三遠法」一宮市三岸節子記念美術館(愛知)

掲載

  • 『「めがねと旅する美術」見えないものを見るための、世界ののぞき窓』(青幻舎)
  • 日曜美術館「アートシーン」(NHK Eテレ)
  • 画集『山田純嗣 絵画をめぐって』(不忍画廊)
  • 「山田純展 絵画をめぐって―理想郷と三遠法―」パンフレット(一宮市立三岸節子記念美術館)

(14-5) 秋冬山水 (冬景)

 

2014年

46×29.3cm

ポリコートパネルに印画紙、樹脂、ラメ、インタリオ・オン・フォト

ed. 5

個人蔵