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アート
04/17
山田純嗣
昔飼っていた犬をモチーフにした作品。シンプルな作品だが、シンプルさはイコンのような働きを持っている。
愛犬「花子」は私が11歳のときにリンゴ1箱と交換で家にもらわれてきた真っ白な紀州犬。飼い主以外にはなつかない、母に言わせると飼いにくい犬だったが、末っ子の私にとっては家族の中で唯一の弟分としてとてもかわいがっていた。
月日が流れて2001年、以前子どもだった私は、すっかり大人になっていて、実家からは高校生のときに離れてもう10年ほど経っていた。実家に残した花子は、16歳になっていて、目も鼻もうまく働かず、ボロボロの老犬になっていた。9月11日の夜、たまたま実家に帰ると、花子は今まで聞いたこともないような苦しそうな悲鳴を上げていた。私は庭の犬小屋の前で花子を撫でた。いよいよその時が来たかと悟りつつ、私が帰るのを待っていてくれたのだと思うと、最近すっかり一緒に過ごしていなかったことへの懺悔の気持ちがこみあげた。撫でていると花子の苦しそうな声は少し落ち着いた。家の中では父が「アメリカが今すごいことになっている!」と叫んでいた。私は花子の苦しみが少しでも和らぐようにと花子を撫で続けていた。だんだん静かになった花子は、明け方息を引き取った。少年時代を共にしたかけがえのない弟分、花子。9.11の事を思い出すと花子のことも思い出す。

展覧会歴

  • 2010年 個展「森の距離 Distance In Forest」不忍画廊(東京)

(10-7) HANAKO

 

2010年

40×40cm

ポリコートパネルに印画紙、樹脂、パールパウダー、インタリオ・オン・フォト

ed.4

1/4:個人蔵

2-4/4:作家蔵