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アート

ポジション2012

絵画や彫刻は物質にすぎないが、その本質はそれを通じて感じる不在の理念の方にある。それを顕すには、作品をつくる側も見る側も、作品に対する奉仕、つまり絶対的な信頼、愛のようなものが欠かせない。そのことは信じる心にのみ現れる「浄土」の考えと共通するのではないか、ならば展覧会会場はさしずめ浄土世界ではないかと考えた。そこで、京都にある浄瑠璃寺の浄土式庭園をモチーフに、浄土世界の入り口をつくろうと考えた。浄瑠璃寺の浄土式庭園は、中央の園池を挟んで日の昇る東に薬師如来を祀った三重塔、日の沈む西に9体阿弥陀如来を祀った本堂で構成されている。薬師如来は人々の現世の苦しみを取り除き、阿弥陀如来は極楽浄土で往生した人を迎え入れる。池を挟んで此岸(現世)と彼岸(浄土)をあらわし、此岸から彼岸を眺めると、池を向いて並んだ阿弥陀の姿は池に映り込み、日の出没まで含めて、庭園は壮大なインスタレーションのようである。それに倣い、入口すぐのエントランスホールを「現世」、通路の向こうの展示室1を「浄土」と設定して相互に眺められるような構成とした。また、その二つを繋ぐ通路を浄土へ通ずる道、「二河白道」とした。展覧会会場全体がまるで浄土のような空間になればと考えた。



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