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アート
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山田純嗣

 油画の作品。その制作にあたってまずドローイングを繰り返した。最初は画面の矩形の中に単純な構造のみを描く。次にそのドローイングを水分を多く含んだ絵具で模写し、次はその模写を模写する。これを繰り返すうちに、滲みによって画像は溶け合い、構造を持ちつつも当初のイメージからは遠く離れ、別の風景があらわれてくる。水による偶然の滲みでできあがった紙のこの画面を、物質的に堅牢な油彩とキャンバスに置き換え、マチエールを加えて再現し定着させた。油画の筆致でも、水墨画の筆致でも線は自然界に実存せず、線による描画は抽象性を帯び、筆致は精神の揺れの表出と繋がることは東西で共通する。滲みを油画の筆致であらわすことは、抽象画の東西の交差点で、矢代の言う「滲みの感覚なるものはほとんど西洋美術に見られず、東洋美術に特有であり、こと日本美術において支配的であった」ことを、西洋の手法によって翻訳し、表舞台に上げ問う試みでもある。また、滲みの画面に『芥子園画伝』を元にした点景を重ねることで抽象画に具体性を持たせ、抽象と具象の間を往還、もしくはその間で宙吊りにさせられる。(山田純嗣展「絵画をめぐって 点景」ステートメントより)
 作品タイトルは、描かれた点景人物の元となった『芥子園画伝』の説明に添えられた漢詩から引用している。

展覧会歴

  • 2020年 山田純嗣個展「絵画をめぐって 点景」不忍画廊(東京)

(20-9) 間に竹に入る路を看て自と山に向かう心有り

 

2020年

22.7×15.8cm

キャンバス、油彩

個人蔵